菩提寺とは、先祖代々が宗旨に帰依しているお寺のことです。先祖の位牌を納めてある寺という意味でもあり、菩提所と呼ばれることもあります。菩提はサンスクリット語で悟りを意味し、家族や親戚縁者が悟りを開いて目ざめられるようにと願って建てられたものです。こうした思いは死者に対してもむけられており、菩提は「死後の冥福」も意味し、葬儀や葬式も菩提寺で行われます。かつて古代や中世の時代には、氏寺と呼ばれていました。例えば、寛永寺や増上寺は徳川家の菩提寺ですし、豊臣秀吉は高台寺、織田信長は大徳寺塔頭総見院がそれぞれ菩提寺です。今でも菩提寺という言い方は残っていますが、有力者や著名人、代々続く名家を除けば、一般的には使われなくなっています。その背景として、信心深い生活を日々送っている人が少なく、菩提寺との関わりが薄いことが挙げられます。また、江戸時代、庶民も寺請制度により特定の寺院の檀家になることが決められていたので、その流れから今でも葬儀や葬式を行う寺がおおよそ決まっています。それを菩提寺とまで言えるかは個々により異なります。